【建設業】建設業法をゼロから学ぶ!まず押さえたいポイントまとめ

建設業界の法律といえば「建設業法」です。

この記事は、建設業ビギナー向けに「建設業法の全体感をつかむこと」を目的に押さえておきたい代表的なポイントを抜粋して簡単に解説していきます。

建設業法とは

建設業とは、建設工事の完成を請け負う営業をいい、建設業法は、1949年に制定された建設業に関する法律です。

契約や工事の内容、完成後の安全性を守るためのルールなどについて、国が法律として定めたものが建設業法となります。

建設業では、建設業を営む者を「建設業者」と「建設業を営む者」の2種類に用語を使い分けています。

それぞれ下記の意味があります。

建設業者:建設業の許可を受けている者(建設業許可業者)

建設業を営む者:建設業許可の有無を問わず、全ての建設業を営む者

「軽微な建設工事」のみを請け負うことを営業とする者については、建設業の許可を必要としません。

軽微な建設工事とは、下記に該当する工事をいいます。(令第1条の2)

軽微な建設工事

建築一式税込1,500万円未満の工事又は延べ面積150㎡未満の木造住宅工事

その他税込500万円未満の工事

※請負代金の額は消費税を含みます。

建設業の許可(建設業法 第3条)

建設業の許可の種類

建設業を営もうとする者は、軽微な建設工事だけではなく、それ以上の規模の工事をする場合は、建設業の許可を受けなければなりません。(法第3条)

建設業の許可は、29の建設工事の種類ごとに分けて行われます。

建設業の許可 29業種

土木、建築、大工、左官、とび・土工、石、屋根、電気、管、タイル・れんが・ブロック、鋼構造物、鉄筋、舗装、しゅんせつ、板金、ガラス、塗装、防水、内装仕上、機械器具設置、熱絶縁、電気通信、造園、さく井、建具、水道施設、消防施設、清掃施設、解体

知事許可と大臣許可

建設業の許可は、営業所の所在地によって知事許可と大臣許可の2つの区分に分かれます。(法第3条第1項)

知事許可:建設業を営もうとする営業所が1つの都道府県の区域内にのみ所在

大臣許可:建設業を営もうとする営業所が2つ以上の都道府県に所在

特定建設業と一般建設業

建設工事の施工に際して、下請契約の規模によって一般建設業と特定建設業の2つの区分があります。(法第3条第1項)

一般建設業:発注者から請け負った一件の工事の全部又は一部を下請けに出す際の下請代金が4,000万円(建築一式工事の場合は6,000万円)未満の場合や下請けとしてだけ営業する場合

特定建設業:発注者から請け負った一件の工事の全部又は一部を下請けに出す際の下請代金が4,000万円(建築一式工事の場合は6,000万円)以上の場合

(法第3条(施行令第2条))

許可の要件と有効期間

許可の要件

・建設業に係る経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を有する(法第7条第1号)

・各営業所に技術者を専任で配置している(法第7条第2号、法第15条第2号)

・誠実性(法第7条第3号)

・財産的基礎等(法第7条第4号、法第15条第3号)

・欠格要件に該当しない(法第8条、法第17 条(準用))

 

許可の有効期間

許可の有効期間は、許可のあった日から5年目の許可があった日に対応する日の前日をもって満了することとされています。

引き続き建設業を営もうとする場合には、期間が満了する30日前までに、許可の更新の手続きを取る必要があります。

許可の更新の申請をしていれば、有効期間が満了しても、許可又は不許可の処分が行われるまでは、従前の許可は有効です。

契約の締結(建設業法 第19条)

請負契約書に記載すべき内容

建設工事の請負契約の当事者は、契約の締結に際して、次に掲げる15の事項を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければなりません。(法第19条第1項)

※書面による契約は、例外なく全ての建設工事の請負契約について義務づけられています。

  1 工事内容
  2 請負代金の額
  3 着手及び完工の時期
  4 工事を施工しない日又は時間帯
  5 請負代金支払の時期及び方法
  6 当事者の申し出があった場合における工期の変更又は損害の負担及びそれらの算定方法
  7 天災等不可抗力による工期の変更又は損害の負担及びその額の算定方法
  8 価格等の変動等に基づく請負代金の額又は工事内容の変更
  9 第三者損害の賠償金の負担
10 貸与資材等の内容及び方法
11 工事完成検査の時期及び方法並びに引渡しの時期
12 工事完成後における請負代金の支払の時期及び方法
13 工事目的物の契約不適合責任または契約不適合責任に関する保証等の措置に関する内容
14 履行遅滞、債務不履行の場合における遅延利息、違約金その他の損害金
15 契約に関する紛争の解決方法

基本契約書などを締結した上での契約(注文書・請書)

基本契約書は、注文書及び請書に個別に記載される事項を除き、15項目(法第19条第1項各号)に掲げる事項を記載し、当事者の署名又は記名押印をしたうえで相互に交付します。

基本契約書等を結んであれば注文書・請書に15項目を掲げる必要はありません。

配置すべき技術者(建設業法 第26・27条)

建設業法における工事現場の技術者制度

引用元:国土交通省 四国地方整備局

所属建設業者との直接的かつ恒常的な雇用関係

現場に配置する監理技術者等は、一定資格を有した上で所属建設業者と直接的かつ恒常的な雇用関係が必要です。

従って、派遣社員など以下のような者の配置は認められません。

配置が認められないケース

直接的な雇用関係を有していない:在籍出向者や派遣社員など

恒常的な雇用関係を有していない:短期雇用など

監理技術者等の職務

監理技術者等の職務は、当該工事現場における建設工事の施工の技術上の管理をつかさどることです。

すなわち施工に当たり、施工内容、工程、技術的事項、契約書及び設計図書の内容を把握した上で、その施工計画を作成し、工事全体の工程の把握、工程変更への適切な対応等具体的な工事の工程管理、品質確保の体制整備、検査及び試験の実施等及び工事目的物、工事仮設物、工事用資材等の品質管理を行うとともに、当該建設工事の施工に従事する者の技術上の指導監督を行うことです。

工事現場への「常駐」を必要とするものではありません。

※監理技術者等の職務については、監理技術者制度運用マニュアルに記載あり。

監理技術者等が工事現場に専任すべき工事

公共性のある施設若しくは工作物又は多数の者が利用する施設若しくは工作物に関する重要な建設工事に配置される監理技術者等は、工事現場ごとに専任の者でなければなりません。(法第26条第3項)

公共性のある施設:戸建ての個人住宅を除くほとんどの工事が該当(令第27条)

重要な建設工事:工事1件の請負代金の額が3,500万円(建築一式工事の場合は7,000万円)以上の工事

工事現場ごとに専任他の工事現場に係る職務を兼務せず、常時継続的に当該工事現場に係る職務にのみ従事していること。必ずしも工事現場へ「常駐」を必要とするものではありません。

主任技術者から監理技術者へ変更

主任技術者を設置した工事で、大幅な工事内容の変更等により、工事途中で下請契約の請負代金の額が4,000万円(建築一式工事の場合は6,000万円)以上となったような場合には、発注者から直接建設工事を請け負った特定建設業者は、主任技術者に代えて、所定の資格を有する監理技術者を設置しなければなりません。

ただし、工事施工当初において、このような変更があらかじめ予想される場合には、当初から監理技術者になり得る資格を持つ技術者を設置しなければなりません。(監理技術者制度運用マニュアル)

監理技術者等の途中交代

認められる場合としては、監理技術者等の死亡、傷病、出産、育児、介護または退職等、真にやむを得ない場合のほか、次に掲げる場合等が考えられます。

① 受注者の責によらない理由により、工事の中止又は工事内容の大幅な変更が発生し、工期が延長された場合

② 工場製作を含む工事であって、工場から現地へ工事の現場が移行する時点(橋梁、ポンプ、ゲート、エレベーター、発電機・配電盤等の電機品等)

③ 一つの契約工期が多年に及ぶ場合

専任で配置すべき期間

建設業者が、監理技術者等を工事現場に専任で配置すべき期間は、契約工期が基本となります。

しかし、発注者が余裕期間を設定した工事は、契約締結日から工事開始日までの期間は監理技術者等の設置は不要となります。

ただし、発注者と建設業者の間で余裕期間が設計図書若しくは打合せ記録等の書面により明確となっていることが必要です。(監理技術者制度運用マニュアル)

2以上の工事を同一の主任技術者が兼任できる場合

公共性のある工作物に関する重要な工事のうち

①密接な関連のある2以上の建設工事を同一の建設業者が

②同一の場所又は近接した場所において施工する場合は、

同一の専任の主任技術者がこれらの工事を管理することができます。

※専任の監理技術者には適用されません(令第27条第2項)

① 工事の対象となる工作物に一体性若しくは連続性が認められる工事又は施工にあたり相互に調整を要する工事であって、② 工事現場の相互の間隔が10km程度の近接した場所において施工されるものについて、同一の専任の主任技術者がこれらの建設工事を管理することができる。

一の主任技術者が管理することができる工事の数は、専任が必要な工事を含む場合は、原則2件程度とする。

2以上の工事を同一の監理技術者等が兼任できる場合

同一あるいは別々の発注者が同一の建設業者と契約を締結する場合、下記の要件を満たせば全体の工事を当該建設業者が設置する同一の監理技術者等が掌握し、技術上の管理を行うことが合理的であると考えられます。

これら複数の工事を一の工事とみなして、同一の監理技術者等が当該複数工事全体を管理することができます。

契約工期の重複する複数の請負契約に係る工事であること

②それぞれの工事の対象となる工作物等に一体性が認められるもの

※当初の請負契約以外の請負契約が随意契約により締結される場合に限る

監理技術者の専任の緩和

引用元:国土交通省 四国地方整備局

令和2年10月1日に特例監理技術者の制度が創設されました。(建設業法第26条)

兼任できる工事現場

・特例監理技術者が兼務できる工事現場数は2まで

・兼務できる工事現場の範囲は、主要な会議への参加、工事現場の巡回、主要な工程の立ち会いなど、元請としての職務が適正に遂行できる範囲。

※発注者により、兼務できる工事に別途定めがある場合があります。

 

監理技術者補佐

・特例監理技術者を置く場合には、監理技術者補佐を当該工事現場毎に専任で配置すること。

・監理技術者補佐となる資格は、主任技術者の資格を有する者のうち一級の技術検定の第一次検定に合格した者(一級施工管理技士補(※令和3年4月1日施行))又は一級施工管理技士等の国家資格者、学歴や実務経験により監理技術者の資格を有する者であること。

監理技術者資格者証制度・監理技術者講習制度

引用元:国土交通省

専任の監理技術者(特例監理技術者を含む)は、監理技術者資格者証の交付を受けている者であって、監理技術者講習を受講したもののうちからこれを選任しなければなりません。(法第26条第5項)

※令和3年1月1日以降は、監理技術者講習の有効期限の起算日が講習を受講した日の属する年の翌年の1月1日となり、同日から5年後の12月31日が監理技術者講習の有効期限となりました。

施工体制台帳等の作成義務(建設業法 第24条)

公共工事においては発注者から直接請け負った工事を施工するために下請契約を締結したときは、施工体制台帳及び施工体系図を作成しなければなりません。

また民間工事においては、発注者から直接請け負った建設工事を施工するために締結した下請契約の請負代金の総額が4,000万円(建築一式工事にあっては、6,000万円)以上となったときには、施工体制台帳等を作成しなければなりません。(法第24条の8第1項)

施工体制台帳は、工事の目的物の引渡しを行うまでは工事現場に備え置かなければなりません。

また施工体制台帳の一部は、法第40条の3の「帳簿」の添付書類として添付しなければならないこととされています。(規則第26条第2項第3号

この帳簿への添付が必要な部分は、次の事項が記載された部分で、工事の目的物の引渡しの日から5年間(「発注者と締結した住宅を新築する建設工事」に係るものにあっては10年間)保存が必要となります。(規則第28条)

① 監理技術者等の氏名・資格
② 下請業者の名称・許可番号等
③ 下請工事の内容及び工期
④ 下請業者の主任技術者等の氏名・資格

建設業法で定める標識(建設業法 第40条)

建設業法では、建設業の営業又は建設工事の施工が建設業法による許可を受けた適法な業者によってなされていることを対外的に明らかにするため、建設業者に対し、その店舗及び建設工事(発注者から直接請け負ったものに限る。)の現場ごとに、公衆の見やすい場所に標識を掲げることを義務づけています。(法第40条)

検査・引渡し等(建設業法 第24条)

建設業法では、元請負人に対しては、竣工検査の早期実施及び工事目的物の速やかな受領が義務付けています。

工事完成の通知を受けてから、検査を完了するまでの期間

下請負人から工事完成の通知を受けたときは、元請負人は、当該通知を受けた日から20日以内で、かつ、できる限り短い期間内にその完成を確認するための検査を完了しなければなりません。(法第24条の4第1項)

引渡しの申し出があってから、引渡しを受けるまでの期間検査によって建設工事の完成を確認した後、下請負人が引渡しを申し出たときは、元請負人は、当該建設工事の目的物の引渡しを直ちに受けなければなりません。(法第24条の4第2項)

下請負人からの「工事完成の通知」や「引渡しの申し出」は口頭でも足りますが、後日の紛争を避けるため書面で行うことが適切です。

なお、「建設工事標準下請契約約款」では、以下について規定されています。

下請負人からの「工事完成の通知」及び「引渡しの申し出」は書面によること。

② 通知を受けた元請負人は、遅滞なく下請負人の立会のうえ検査を行い、結果を書面により通知すること。

下請代金の支払(建設業法 第24条)

注文者の支払を受けてから下請業者に支払うまでの日数

元請負人は注文者から出来形部分に対する支払又は竣工払を受けたときは、支払の対象となった建設工事を施工した下請負人に対して、相当する下請代金を当該支払を受けた日から1月以内で、かつ、できる限り短い期間内に支払わなければなりません。(法第24条の3第1項)

前払金(中間前金払)の支払を受けたとき

引渡しの申し出があってから支払を行うまでの日数(特定建設業者)

特定建設業者は、注文者から支払を受けたか否かにかかわらず、工事完成の確認後、下請負人(特定建設業者又は資本金額が4,000万円以上の法人は除く。)から工事目的物の引渡しの申し出があったときは、申出の日から起算して50日以内を経過する日以前において、かつ、できる限り短い期間内に下請代金を支払わなければなりません。(法第24条の6第1項)

支払期日の定めがない場合は、引渡しの申し出があった日が支払期日とみなされます。(法第24条の6第2項)

支払方法

下請代金の支払は、できる限り現金払とすることが建設業法令遵守ガイドラインに記載されています。

帳簿の備付け(建設業法 第40条)

建設業者が適正な経営を行っていく上で、自ら締結した請負契約の内容を適切に整理・保存して、その進行管理を行っていくことが重要です。

このため、営業所ごとに、定められた事項を記載した帳簿を備え、営業に関する図書とともに一定期間保存することが義務付けられています。(法第40条の3)

この帳簿に関する義務は全ての建設業者を対象とします。

民間工事についても、また下請負人となった場合でも請負代金の金額に関係なく目的物の引渡しの日から5年間(住宅は10年間)保存しなければなりません。

また営業に関する図書ついて、元請業者は、引き渡し日から10年間の保存義務があります。(規則第28条第2項)

営業に関する図書

① 完成図
② 発注者との打合せ記録
③ 施工体系図

「建設業法施行規則」第26条第5項

一括下請負(丸投げ)の禁止(建設業法 第22条)

●建設業法第22条(一括下請負の禁止)

・建設業者は、その請け負った建設工事を、いかなる方法をもってするを問わず、一括して他人に請け負わせてはいけません。(第1項)

建設業者:建設業の許可を受けている者

・建設業を営む者は、建設業者から当該建設業者の請け負った建設工事を一括して請け負ってはいけません。(第2項)

建設業を営む者:建設業の許可の有無を問わず、全ての建設業を営む者

●入札契約適正化法第14条(一括下請負の禁止)

公共工事については、いかなる理由があっても一括して他人に請け負わせることや請け負うことはできません。(法第22条第3項の規定は、適用しません)

公共工事:国・地方公共団体・特殊法人等が発注する工事

建設業者に対する監督処分(法第28・29条)

建設業者が建設業法や入札契約適正化法等に違反すると建設業法上の監督処分の対象になります。

監督処分には、一定の行為について、作為又は不作為を命じる「指示処分」、法の規定により与えられた法律上の地位を一定期間停止する「営業停止処分」、あるいは剥奪する「許可の取消し処分」の3種類があります。

指示処分

建設業者が建設業法等に違反すると、監督行政庁による指示処分の対象となります。

指示処分とは、法令違反や不適正な事実を是正するために業者がどのようなことをしなければならないか、監督行政庁が命令するものです。

営業停止処分

建設業者が指示処分に従わないときには、監督行政庁による営業停止処分の対象になります。

一括下請負の禁止規定の違反や独占禁止法、刑法など他の法令に違反した場合などには、指示処分なしで直接営業停止処分がなされることがあります。

営業停止の期間は、1年以内の範囲で、監督行政庁が判断して決定します。

許可の取消し処分

不正な手段で建設業の許可を受けたり、営業停止処分に違反して営業したりすると、許可行政庁(=監督行政庁)によって、建設業の許可の取消しがなされます。

一括下請負の禁止規定の違反や独占禁止法、刑法など他の法令に違反した場合で情状が特に重いと判断されると、指示処分や営業停止処分なしで直ちに許可取消しとなります。

建設工事紛争審査会(法第25条)

建設工事は、建物等に手抜きや不具合がある、契約したはずの仕様と異なる、請負代金の支払いが滞っているといった原因で紛争が生じることがあります。

建設工事紛争審査会は、こうした建設工事の請負契約をめぐる紛争につき、専門家による迅速かつ簡便な解決を図ることを目的として、建設業法に基づき、国土交通省及び各都道府県に設置されています。(法第25条)

経営事項審査(法第27条)

公共工事を発注者から直接請け負おうとする建設業者は、その経営に関する客観的事項について審査を受けなければなりません。

逆に言えば、公共工事を元請でやることがないのであれば審査を受ける必要はありません。

この審査は経営事項審査(俗に言う経審「ケイシン」)といいます。(法第27条の23)

経営事項審査は、経営状況分析経営規模等評価の事項について、全国一律の数値評価で行われます。

経営状況分析:国土交通大臣の登録を受けた経営状況分析機関が審査

経営規模等評価:建設業の許可行政庁が審査

公共工事の発注者は、工事の発注に際して、客観的事項としてこの総合評定値を活用します。

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