【建設業】建設業の契約の基礎知識

建設業の契約についてまとめました。

契約とは

契約は口約束でも有効

民法では、原則として契約は、口約束でも有効です。

ある人が「売ります」と言い、もう一人が「買います」と言えば、意思が合致し契約が成立します。

契約の当事者の意思表示が合致するだけで目的物の引渡しなどがなくても契約は成立します。

これを諾成(だくせい)契約といいます。

つまり「契約書にサイン・押印していないからまだ契約したことにならない」というのは間違っています。

契約書を作成する理由

なぜ契約書を作成するのでしょうか。

それは契約を補完するためで、万が一、後から「そんな内容の契約していないよ」と言われた時のためです。

もちろん、口約束でも契約は有効なので、契約書が無くても有効な契約になりますが口頭で成立しても、後日その件で紛争になった場合は、第三者でもわかる「証拠」が必要になります。

この証拠が「契約書(注文書・請書)」です。

建設業の契約・建設業工事請負契約とは

建設業者である請負人が、建設工事の施工を請負い、注文者が、その対価として、報酬を支払う契約のことを建設工事請負契約といいます。

建設業の契約書作成は義務

建設業は、契約書の作成が義務であり必要です。

建設業にとって、「契約書が無くても契約が成立すのかどうか」と「契約書を作成しないといけないかどうか」は別問題です。

建設業を取り巻くルールの1つに建設業法というものがあります。

建設業の契約金額は、高額で工期も長いことが多いことからトラブルになる可能性も高いとも考えられます。

発注者と工事会社は、工期延長や工事中止の場合、費用負担はどうするのかなど、想定されるトラブルに備えることが必要です。

建設業に契約書が必要な理由は、実務上必要、法律的に契約上のトラブルに備えるため、ということの他に、建設業法で義務付けられているために契約書の作成が必要です。

建設業法では、

「建設工事の請負契約の当事者は、各々の対等な立場における合意に基いて公正な契約を締結し、信義に従つて誠実にこれを履行しなければならない。」(第18条)

「建設工事の請負契約の当事者は、前条の趣旨に従つて、契約の締結に際して次に掲げる事項を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならない。」(第19条)

と定められています。

この19条の中に出てくる書面が、「契約書」です。

そしてこの契約書は、工事の着工前に交付しなければなりません。

※建設業許可を受けていない場合も契約書は必要
建設業許可の不要な小規模な工事でも契約書は必要です。

建設業許可の有無に関係無く、建設業を請け負うときには建設業法第19条が適用されますので、契約書の交付義務があります。

契約書に必要な14項目

契約書に必要な項目は、建設業法19条の規定の続きに明確に記載されています。

項目は全部で14項目あります。

項目
一 工事内容二 請負代金の額
三 工事着手の時期及び工事完成の時期
四 請負代金の全部又は一部の前金払又は出来高部分に対する支払の定めをするときは、その支払の時期及び方法五 当事者の一方から設計変更又は工事着手の延期若しくは工事の全部若しくは一部の中止の申出があつた場合における工期の変更請負代金の額の変更又は損害の負担及びそれらの額の算定方法に関する定め

六 天災その他不可抗力による工期の変更又は損害の負担及びその額の算定方法に関する定め

七 価格等(物価統制令(昭和二十一年勅令第百十八号)第二条に規定する価格等をいう)の変動若しくは変更に基づく請負代金の額又は工事内容の変更

八 工事の施工に三者が損害を受けた場合における賠償金の負担に関する定め

九 注文者が工事に使用する資材を提供し、又は建設機械その他の機械を貸与するときは、その内容及び方法に関する定め
十 注文者が工事の全部又は一部の完成を確認するための検査の時期及び方法並びに引渡しの時期

十一 工事完成後における請負代金の支払の時期及び方法

十二 工事の目的物の瑕疵を担保すべき責任又は当該責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置に関する定めをするときは、その内容

十三 各当事者の履行の遅滞その他債務の不履行の場合における遅延利息、違約金その他の損害金

十四 契約に関する紛争の解決方法

契約書が必要になる場面

建設業法に定められているので契約書が必要ということはわかりましたが、契約書が必要になる場面が他にもあります。

建設業許可申請に必要な資料として、契約書が重視されます。

過去にどんな工事をしてきたかという根拠として契約書が使用されます。

契約書を作成しなかった場合どうなるか

建設業法違反で行政処分

契約書交付は、建設業法で義務付けられていることなので、契約書を交付しない場合は、建設業法違反になります。

※国土交通省から契約書を交付しなかっただけでも建設業法違反になるという見解が出されています。

建設業法19条違反については、行政処分が下されることになります。現在、取得している建設業許可が取り消しになったり、更新ができなくなったりする可能性があります。

また建設業の許可業者か否かを問わず営業停止処分を受けるおそれがあります。

有事の際の紛争リスクが高まる

建設業は、その業態から紛争リスクを抱えている業種ともいえます。

契約金額が比較的高額で工期も長く、建設業者と発注者との間で契約内容の解釈に差がある可能性もあるため紛争が起こる可能性が高いです。

例えば、追加で工事費用が掛かることになってしまった場合、注文者としては最初の工事金額で全部カバーしているだろうと思っていて、追加金額を払いたくないと思うかもしれません。

建設業者としては、追加で発生する費用はきちんと請求したいところです。その時、契約書が無ければ、トラブルになるでしょう。

もし、工事金額について、代金をいつまでにどのような方法で支払うのか取り決めがなかったら、建設業者も困ります。

このように、契約書という見える形で、発注者と工事会社がきちんと取り決めをしないと紛争リスクが高くなります。

契約書の雛形

建設工事請負契約には、様々な雛形(約款)があります。

代表的なものとしては、国土交通省が定めているもの(民間建設工事標準請負契約約款)、民間(旧四会)民間連合協定工事請負契約約款委員会が定めたもの(民間(旧四会)民間連合協定工事請負契約約款)があります。

ともに大規模な工事を想定している約款です。

まとめ

建設業において、契約書を交付することなく契約することは、契約上は有効でも建設業法違反である。

契約書はきちんと作成しましょう。

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