【建設業】見積書に記載する法定福利費とは

この記事では、見積書に記載する法定福利費について簡単に解説します。

法定福利費とは

国土交通省がすすめる社会保険加入制度の取り組みの一つとして、法定福利費の見積書への記載は2013年から始まっています。

法定福利費とは、①健康保険料、②厚生年金保険料、③雇用保険料、④労災保険料、⑤介護保険料、⑥子ども・子育て拠出金の6つを示します。

それぞれ簡単に解説します。

保険の種類対象
健康保険料従業員とその家族がケガや病気、出産、死亡などを生じた際に、医療費やその一部を必要に応じて支給する保険
厚生年金保険料受給時に国民年金の額に上乗せして給付される年金

受給対象者は主に会社員

雇用保険料従業員が失業した場合など、生活の安定と再就職の促進のために失業等給付を支給する保険

従業員が一人でもいれば、事業主は雇用保険の加入手続きをする必要があり、基準を満たせばパート従業員も加入

労災保険料従業員の勤務中や通勤中にケガや病気、死亡などが生じた場合に支給される保険

従業員が一人でもいる場合、事業主は加入する必要があります。

事業主が全額を負担

介護保険料介護保険は、老化に起因する病気やケガによって介護を必要とする人に、費用の一部を支給する保険

40歳になった月からすべての人に加入が義務付け

65歳以上は「第1号被保険者」、40〜64歳までは「第2号被保険者」と区分されています。

子ども・子育て拠出金以前は、「児童手当拠出金」と呼ばれていましたが2015年に「子ども・子育て拠出金」と呼称変更。

15歳未満の子供がいる家庭に給付される児童手当や、子育てに関する国の事業に使われます。

事業主が全額負担

 

法定福利費の算出方法

基本的な算出方法として、見積額に計上した労務費に各保険の保険料率を乗じて算出する方法が一般的です。

法定福利費 = 労務費 × 法定保険料率

労務費の算出方法

労務費の算出方法は、企業ごとに異なりますが、一般的には下記の2パターンのようになります。
労務費の計算例①
労務費 = 必要な人工数 × 平均の日額賃金
必要な人工数:20人工
平均の日額賃金:20,000円
20人工 × 20,000円 400,000円
この場合は、400,000円が労務費となります。
他にも厚生労働省で決められている「平均的な労務比率」を設定し、それを掛けることで労務費を計算する方法もあります。
労務費の計算例②
労務費 = 工事費 × 労務費率
本体工事:10,000,000円
労務比率:23%
10,000,000円 × 23% = 2,300,000円
この場合は、2,300,000円が労務費となります。

法定保険料率の算出方法

見積書に記載する法定福利費は、労災保険以外の5種です。
保険名
※2022年 東京(事業主負担)
雇用保険料0.8%
健康保険料4.935%
介護保険料0.895%
厚生年金保険料9.15%
子ども・子育て拠出金0.36%
合計16.14%

法定福利費の算出例

法定福利費の算出例

 工事費:10,000,000円
労務比率:23%
保険率:16.14%

10,000,000円 × 23% ×  16.14% = 371,220円

上記例を元に法定福利費を計算すると371,220円が見積書に記載する法定福利費となります。

法定福利費の個別内訳は下図の通りです。

保険名
(事業主負担)
労務費法定福利費
(事業主負担)
雇用保険料0.8%2,300,00018,400円
健康保険料4.935%2,300,000113,505円
介護保険料0.895%2,300,00020,585円
厚生年金保険料9.15%2,300,000210,450円
子ども・子育て拠出金0.36%2,300,0008,280円
合計16.14%2,300,000371,220円
上記はあくまで1例ですので、国民健康保険加入者や介護保険料の支払い対象外の場合は、違った保険率を適用します。
参考)その他の算出方法

その他の算出方法としては、個別工事ごとの法定福利費を簡便に算出する方法もあります。

法定福利費 = 工事費 × 工事費当たりの平均的な法定福利費の割合

法定福利費 = 工事数量 × 数量当たりの平均的な法定福利費

自社の施工実績に基づくデータ等を用いて工事の費用に含まれる平均的な法定福利費の割合工事の数量当たりの平均的な法定福利費をあらかじめ算出した上で、個別工事毎に算出します。

この方法は、その性質上、ある程度定型化した、工事費の増減又は数量の増減が労務費と比例している工事について使用することが適当です。

 

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