【建設業】決算書の見方

建設業の決算書を見る場合は、現金預金の残高や外注費などに注目してみるといいです。

ここでは、建設業の決算書で最低限押さえておきたい点を確認します。

建設業の貸借対照表の特徴

建設業の貸借対照表の特徴は、他業種と比較して現金預金の残高が多い点です。

これは、長期間の工事の場合、あらかじめ代金の一部を前受けしているからです。

ちなみに製造業と比較して固定資産の割合が低いのも建設業の特徴です。

建設業の損益計算書の特徴

建設業の損益計算書の特徴は、外注費の割合が多い点です。

大手企業になればなるほど、下請企業に外注する割合が高くなります。

下請企業になるほど、外注の割合は低くなる傾向にあります。

建設業の受注高・売上高とは

受注高とは、受注した時点の金額のため、その時点では、売上にはなっておらず「未来」のお金と考えていいでしょう。

一方の売上高は、すでに売上になっている金額ものを指しますので、その時点で「過去」のお金を表す指標と言えます。

建設業では、一般業種で売上高にあたるところを、完成工事高(完工高)と呼びます。

建設業は、工事完成基準(工事が完成したときに請負金額を全額計上)の場合、工期が長いと完成工事高が大きくずれます。

※現在は、工事進行基準(工事の進捗に沿って、施工が完了した部分に相当する金額分を計上)も認められている為、工事の完成・引き渡しが完了していなくても売上として計上されます。

建設業特有の勘定科目

建設業特有の「勘定科目」について、建設業以外の一般的な経理における「勘定科目」と比較します。

貸借対照表の比較

貸借対照表は、建設業特有の「勘定科目」は4つあります。

勘定科目 ※建設業(≒一 般)
資 産完成工事未収入金(≒売掛金)
未成工事支出金(≒仕掛品)
負 債工事未払金(≒買掛金)
未成工事受入金(≒前受金)

図解すると下図です。

資 産負 債
完成工事未収入金 5,000
未成工事支出金 2,500
工事未払金 3,000
未成工事受入金 2,000
純 資 産

損益計算書の比較

損益計算書は、建設業特有の「勘定科目」は3つあります。

一般的建設業
収入売上高完成工事高
費用売上原価完成工事原価
利益売上総利益完成工事総利益

貸借対照表の勘定科目

建設業特有の勘定科目のうち、貸借対照表の4つの勘定科目について説明します。

完成工事未収入金 ≒ 売掛金

「完成工事未収入金」は、一般的な経理の「売掛金」にあたります。

完成した工事の未収入であるお金、という意味です。

決算時点では、「売上代金が未入金」として、「完成工事未収入金」が貸借対照表の資産に計上されます。

完成工事未収入金のポイント

当期に工事が完成・引渡(売上)

翌期に代金が入金

完成工事未収入金の仕訳
(当期)引渡時
完成工事未収入金5,000 / 完成工事高5,000
(翌期)入金時
現金預金5,000 / 完成工事未収入金5,000

工事未払金 ≒ 買掛金

「工事未払金」は、一般的な経理の「買掛金」にあたります。

工事に関する未払であるお金、という意味です。

決算時点では、「支払代金が未払い」として、「工事未払金」が貸借対照表の負債に計上されます。

工事未払金のポイント
当期に資材費や労務費、外注費などが発生
翌期に代金の支払
工事未払金の仕訳
(当期)外注費など発生時
外注費4,000 / 工事未払金4,000
(翌期)支払時
工事未払金4,000 / 現金預金4,000

未成工事支出金 ≒ 仕掛品

「未成工事支出金」は、一般的な経理の「仕掛品」にあたります。

未だ完成しない工事に関する支出したお金、という意味です。

未成工事支出金のポイント

当期に先行して、資材費や労務費、外注費などが発生

翌期に先行した経費に対する物件の引渡(売上)

未成工事支出金の仕訳
(当期)外注費など発生時
外注費2,000 / 工事未払金2,000

決算時 → 外注費を貸借対照表に退避
未成工事支出金2,000 / 外注費2,000

(翌期)売上時→ 外注費を損益計算書に振替(戻す)
外注費2,000 / 未成工事支出金2,000

未成工事受入金 ≒ 前受金

「未成工事受入金」は、一般的な経理の「前受金」にあたります。

決算時点では、「売上代金を前受け」したとして、「未成工事受入金」が貸借対照表の負債に計上されます。

未だ完成しない工事に関して受入をしたお金、という意味です。

未成工事受入金のポイント

当期にある工事についての手付金や中間金を受け取り

翌期にその工事が完成・引渡

未成工事未収入金の仕訳
(当期)手付金・中間金受取時
現金預金1,000 / 未成工事受入金1,000

(翌期)引渡時
完成工事未収入金2,000 / 完成工事高3,000
未成工事受入金1,000

「未成工事支出金」という勘定科目がなぜ必要か
仮に先行した経費を「未成工事支出金」ではなく、経費として損益計算書に計上した場合、売上の計上は翌期にも関わらず、その工事に関連する経費だけが当期に計上されてしまいます。

その場合、その工事に関する利益は、当期がマイナス、翌期がプラスという形になり、売上と経費との対応関係がおかしくなります。

そこで、決算時点では、先行した経費をひとまず「未成工事支出金」として、貸借対照表の資産の部に退避するわけです。

退避した「未成工事支出金」は、翌期、売上が計上された時点で、経費に振り替えます。

工事損失引当金

工事において損失が見込まれる場合に計上する引当金です。

つまり貸借対照表に工事損失引当金があると、赤字工事を抱えていることが分かります。

引当金の計上が必要となる条件
①工事で発生すると見込まれる原価総額が工事収益の総額を超える可能性が高い
②その金額を合理的に見積ることができる

上記の場合、その超過すると見込まれる額について引当金の計上が必要となります。

損失が発生することが判明した決算期にその損失の全額を計上します。

おすすめの記事